知性派のあなたに
2024.03.30
「私たちは子どもに何ができるのか」
ポールタフ著 高山真由美訳
こんにちは。オーナーズルームみめいです。今回のお勧め本は、教育政策が専門のアメリカ人ジャーナリストがまとめた一冊です。社会派でお堅い?いえ、子育てのヒントがたくさん載っています。
有名大学を出たのにやりたいことがない人、突然会社に来なくなる、すぐ切れちゃう人など残念な大人をたくさん見てきました。大人への階段を一所懸命生きてきたはずなのに、どうして進む道が見つからなかったり、感情コントロールが難しくなるのでしょう。何が原因で、何が人生の成功を左右するのでしょうか。ヒントは幼い頃の環境によってあると著者は語ります。じゃあ、環境を整えなくては!でもどうやって?
知育や栄養でしょうか。著者はストレスに着目します。幼児期、子どもの脳内ではこれから生きる社会生活に備えて神経経路が急速に発達します。この時期に多くのストレスを受ければ、子どもはこの世は困難だと認識し、少しの出来事にも身構えるようになります。用心し傷つかないよう社会と相手を、そして自分を否定するのです。幼児期の高レベルのストレスは、知的機能をつかさどる前頭前皮質の発達を阻害します。
子どもが感情や精神面で発達するための、最初のきわめて重要なファクターは「家族」。子どもは親の反応を通して世界を理解しようとします。子どもが笑うとお母さんも笑う。お父さんが応えてくれる。自分を受け止めてもらうことで相手を信じ、自分を信じることを知ります。やがて自分の道を力強く歩み始めます。乳幼児にとって、親の反応は他のどんな経験よりも発達の引き金となり、脳内の感情や記憶を制御する機能を強くすると本書は述べています。
とすると、親の方もストレスのない状態がベストなのでしょうが、それは難しい。何か手立てはないのでしょうか。著者は、様々な家庭の親子へのフィールドリサーチを通して、親がストレスを抱える状態でも、子どもの知的能力を育むための手立てを解き明かしていきます。
格差の底辺での教育法を解明しようとする本でありながら、子どもがこの世界で生き抜く力を育むにはどう働きかければよいのか。全ての親に対してのメッセージが隠されています。近い将来、お子さんと、世界をよりよくするためにはどうすればよいかとのテーマで話し合う時への備えにもなります。
知性派のあなたにぜひ。
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