黄金の木 黄金の木

アメリカ流子育て

2024.02.06

こんにちは。オーナーズルームみめいです。
皆さんは、お子さんから幼稚園や学校に行きたくないと言われて困ったことはありませんか。

この「幼稚園行きたくない問題」をあっさり解決したのを目撃しました。

解決したのは私の叔父、リチャードです。彼はアメリカ人で、叔母と共に夫婦でスタンフォード大学社会教育学の博士課程に在籍し多忙を極めていました。起きている時間は全て研究(常にPC画面または大量の文献に没頭)、食事中も家の中を歩く時も本を読みながらという状態。博士号取得には通常5年以上かかりますから、そうした生活が何年も続きます。

アメリカの大学は学部で偏差値が変わります。教育学では、スタンフォードはハーバードを抜いて世界第一位でした。当時学生の私は、のんきにベビーシッターをしながら、世界のトップでPh.D.をとるのはさすがに大変なんだなあと傍目に眺めておりました。

多忙な彼らの娘は当然、午前、午後とも公立や私立の幼稚園に、それ以外はベビーシッター、お迎えは実父の前妻の今の夫(ややこしいですね〜)に依頼するなど、親の都合で預けられまくっていました。ちなみに保育関連施設はスタンフォード大学内だけで当時6施設もありました。


娘はナタリーといって、長いまつげとくせ毛のブロンドがキュートな愛らしい5歳の女の子です。ある日ナタリーは父親に、
「お父さん、私、午後のキンダーガーデン(幼稚園)には行きたくないの!」
ときっぱり主張してきました。するとリチャードはやおら本を置いて娘の正面に向き直り、こういいました。

「なるほど。午後の幼稚園に行きたくないというんだね。」
「そうよ」
「ok、ではなぜ行きたくないか理由を挙げてごらん」
「第一に、先生と合わないわ。私が話そうとしても忙しいから聞いてくれないの。
 第二に、アクティビティがつまらないわ。私は外で遊びたいのに、部屋の中でしか遊べないの。第三に、おやつがジャンクフードだわ。お父さんはいつも体に良いものを食べなさいと言うでしょう。それなのに、昨日はポテトチップスとペプシコーラだけだったわ」

私は驚きました。まるでディベートを聞いているようです。5歳の子が大人相手に堂々と論理的な説明をしているのです。ナタリーは背筋をしゃんと伸ばして大きな瞳を更に見開き、ゼスチャーたっぷりにセンテンスを区切りながら、ゆっくりはっきり父親を説得にかかります。

更に驚いたのはリチャードの返答です。
「なるほど。それなら、先生に話を聞いてくれるように頼むこと、おやつを自然フードに変えてもらうよう頼むことはできるね。ただ、アクティビティは園に運動場がないから頼んでも改善されないね。」
そう言ってなんと次の日には、他の幼稚園を複数見に出掛けたのです。もちろんナタリーも一緒にです。それからしばらくして、ナタリーは別の保育園に通うことになりました。

リチャードの流儀がスタンフォード流の教育的アプローチなのか、本人流なのかは分かりません。少なくともナタリーは学んだはずです。相手に自分の考えを伝える時は、感情を整理して論理的に話す必要性や、それが相手を説得できる可能性があることを。

 今回はアメリカ流を例に挙げましたが、フランスでは、意見を言う時は常に理由を3つ挙げよ、と子どもに教えるそうです。また、子どもが大人同士の話に割り込むことは許されません。自己主張の必要性は、常に他国からの侵略の脅威にさらされた欧米ならでの教えと言えなくもありません。かたや、日本では「和をもって尊しとなす」という教えがあります。
どのように教えるのかは親の自由ですが、大切なのは、どのような人に育ってほしいのかという明確なビジョンを親が持っているかどうかではないでしょうか。ビジョンあって始めて方法論が確立されるのだと思います。

かく言うみめい自身は、今後の人生のビジョンを聞かれたとしても「元気に楽しく」くらいしか言えないのですが。

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三宅道子 三宅道子

Writer執筆者

Michiko Miyake

三宅 道子

経歴:大学卒業後、米国へ留学。帰国後NHKへ入局。報道部アナウンサーを経て、人材大手および総合経営コンサルティング会社にて人事系コンサルティングに従事。他、事業会社人事部シニアマネージャー職従事。
資格:米国 CCE.inc認定 GCDF-Japanスーパーバイザー/国家資格2級キャリアコンサルタント/GCDF-Japanキャリアカウンセラー

米国スタンフォード大学にて教育社会学聴講。PhDを目指す学生の優秀層の傾向を知る。カウンセリング、コンサルティング業務を通し教育機関をはじめ幅広い業界で相談業務、教育支援を経験。予備校における営業支援の一環で現代文と小論文教科を指導し、難関大を突破する生徒の傾向を分析。専門学校ではマネジメント論の講義を、大学ではキャリア系講義の他、高学歴でありながら人生に迷う大学生のカウンセリング業務を行う。クライアント企業では階層別人材育成研修を設計、実施し能力開発を行い、特にIT企業に対しメンタルヘルスによる離職防止支援を行う。また企業内人事として採用および全社教育研修設計を行う。 これまで受験生、大学生、社会人の教育支援と成長観測に携わり、学歴と仕事力との相関性 、およびウェルビーイングについてリサーチを続けている。

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幼児教育に対する想い:
子どもの自立的発達が社会を変えると信じています。 VUCAと言われる 先行きの見えない時代、子どもに豊かで幸せな人生を歩んでほしいと誰もが願うものですが、 日本の幸福度ランキングは世界第47位です。幸せの定義を、夢の実現、支えとなる人の獲得、経済的な安定と 仮定するなら、そのために必要な要素は知能と人間力、そして健康です。 なぜなら、 幸せの実現には、高い知能を駆使しながら物事を構造化し、夢を夢で終わらせず明確な目標として設定し周囲の協力を仰ぎながら粘り強く困難を乗り越える力が必要となるからです。当然健康であることが前提です。日本の教育はこれらを十分に伸ばせていると言えるでしょうか。

難関大で就職活動する学生や企業経営者の悩みを聞くと、論理的であるのに自己表現できない学生、優秀であるはずなのに顧客の気持ちを掴めない新人 、体調不良や人間関係が原因で大企業から離職する管理職が少なくありません。こうした不幸は、現在の教育が万全でないことを示しています。日本の受験システムはIQを測るものですから、万全でないのは人間力に当たるEQとSQです。 心の知能指数EQは感情をいかに上手に扱えるかの指標であり、社会的知性であるSQは、高いほど共感を生む影響力やビジョニング、チーム力を発揮します。

子どもに幸せな人生を求めるなら、公的教育で充足しない教育を与えるのは私たち親の役目 です。幼児期は知育、徳育、体育を特に経験を通して身につけることが 第一です。日本語は全ての思考の礎となり、知識なしに思考を深めることはできません。徳育は他者を理解する想像力を育みます。また幼児期の運動がその後の運動継続力を養います。本に親しみ、他者と交わり、集団の中で問題解決や達成経験を積むこと。 時には自然の中で行えるならなお良いでしょう。 人智を超えた大自然に圧倒される体験をAwe(オウ)体験というようですが、この時脳は通常の何十から何百倍も活性化します。これらを可能な限り、大人の介助なしに独立独歩でさせることが重要です。 子どもは、大人の介助がない時ほど探究心を持って集中し、問題を解決しようと試み、達成の充実感を味わうからです。大人は経験の場を与えることと安全の確保、共感する役割に徹します。 口出しを控えることが発達を促進させます。

こうした 子どもの自立的発達が土台となり、自己実現を叶え、やがては個人の幸せはもとより混沌とした世界をより良い社会へ導くと信じることから、幼児期の発達に寄与する価値を感じています。